活動概要

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コーディネーター活動報告

農業製品ものづくり

農林水産省産学連携支援事業・専門型コーディネーター

豊島紀彦

  高校生の頃、家の中で実験をしていたら、ボンッといって電気が切れた。ヒューズが飛んだ。親からは大変怒られた。実は、好き勝手に電気を通して実験をしていたのである。何の実験であったか、今は、定かではない。そんなことが好きであったおかげか、大学では化学工学の道へ進んだ。

 今から思えば、父は植物学を大学で教えていたのでその道へ進めばよかったが、反抗心が旺盛で違ったことがしたかったに違いない。

 その後、仕事となった石油化学プラントのプロセス設計は面白く、実践科学で現場に役に立つプロセスをつくりあげるものであった。実験結果を実用化するプロセス設計であった。研究者が研究した効率の良い反応工程をプロセス化し、装置化するものだが、予定通りの能力が出るかどうか何時も心配であった。石油化学のプラントは工程が長く多人数で分担して受け持っていたが、改良工事の後は、入り口から出口まで滞ることなくブツが出るか、ワクワク感と心配が混在する気持ちでブツが出るのを待っていた。そんなことが思い出される。現場での思い出は多くあるが昼の休憩をとる爽やかな、楽しみもあった。工場が瀬戸内の海岸にあったため、海側に大きな突堤が壁のようにあり、その壁の上が平らで50cm程度の幅であったろうか、横に寝ても何とか大の字で体を横たえることが出来た。汐の香を嗅ぎ、潮風が体中を吹き抜けてゆくのを感じながら、突堤の上で昼寝をした。昼休みを楽しんだ。この昼休みが一番の思い出である。

  最近、農林水産省産学連携支援事業コーディネーターとして農業分野を探求する機会が多くなった。アグリビジネスとは、農業製品を作るわけであるが入口から出口と言うべきか種から製品までと言うべきか、注意深く反応の出来具合を観察してみると実に面白い。プロセス的にも面白いものが沢山あります。病気があったり、害虫対策があったり、餌となる栄養成分があったり、季節性も関与しており、それぞれ農業の基本的単位操作があって、各品種にそれが応用される。エンジニアリングする立場から考えてみると基本的単位操作での条件が与えられれば生産性向上のプロセス改良へ進むことになる。

 石油化学と比べるとアグリの分野は製品になるまでの時間がかかり、生産性の観点からみると技術者の心情をくすぐる内容のものが多い。

 工業製品を作る場合、ものづくりの世界では生産性向上のためすぐ新規シーズに飛びつく人が多いが、アグリの世界では、どうしてかと思うくらい、すぐ飛びつく人がいない。何故であろうか。現場を知らない私どもが勝手を言って申し訳ないが、「農業製品のものづくり」、これが、日本ではこれからの仕事であろう。

 美味しくて、安心安全な食べ物を、生産性良くつくる。これに尽きるのだが、古くからの伝統品でも、新規なアイディアにより世の出された食べ物であっても、もちろん世の中に受け入れられればよろしい。競争原理をどこに求めるか前向き思考で行きたいものである。新しい品種とか海外からの野菜、果物、目新しい温暖化対策技術、アグリ分野での研究が旺盛であることは承知している。それを生産性2倍とか3倍とかにすることに飛びつく研究者が少ないのはなぜであろうか。

 老齢を重ねてきた昨今、時々昔のことを思い浮かべる。1円のコストダウンをするのに何度も、何度も徹夜したことなど。しかし、苦労をし、汗をかいたことが、いまのおれを作ってくれていると思うと苦労話に感謝、感謝である。だから、1940年生まれは今でも、苦労(は楽しいと思って)を追いかけているのだが。